2026.10.31更新



 初老の男性が今日の最初の患者だった。と言ってもその男性は、長く通っている方だ。それまでと違うのは、1年半まえから、本来なら、傍らにいるはずの彼の妻の姿がないこと。彼女は大きな病気を患い、入院を続けている。彼は、妻の入院後、限られた時間しか面会できず、彼女のことを心配することしかできなかった。普段はその不安、孤独を押し殺し、暮らしていた。ただ、今日だけは違っていた。
「なんだか嬉しそうですね。良いことありました?」
との私の問に
「今日、家内が帰ってくる。」
と感情を抑えることをせず、こぼれんばかりの笑顔で言った。そのたった一言に私は目頭が熱くなった。いつも妻を心配、気遣うばかりで、うれしい表情をしばらく見てなかったからだ。
彼が診察室から出るとき、
「先生、ありがとう。今まで病状の説明をしてくれて、助かったよ。」
「これからは、直接、診てやってください。」
その言葉には深い安らぎと安堵感があった。男の妻に対する愛情が感じられた瞬間だった。

そしてそれはこれからもずっと。

 

投稿者: 葉山クリニック

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