2026.05.27更新

宗像市葉山クリニックの撫中です。1週間前、田舎から荷物が送られてきました。もちろん、母親からです。荷物を受け取ったことを連絡すると、「お前のへその緒と母子手帳を入れといた。」と。布製の袋に手帳と霧箱が入っていました。母親の中では終活の一つとしての受け渡しだった、と想像しました。この受け渡しは、成人や結婚のときに親から手渡されるなど、節目に親子で振り返るきっかけになります。自分を産んでくれて早67年、長い間保管していたものを手放す気持ちは如何か、想像するに悲哀が込み上げてきます。それに加え、母が子を思う気持ちに改めて感謝したいと思います。母親なら、ほとんどの方が子供のへその緒を持っているようです。日本の慣習の中でも愛情に満ちたいい慣習ではないでしょうか。生まれたときの感動、そして絆、その後の成長、最後に受けわたす、母子だけの厳粛な儀式に思われます。

投稿者: 葉山クリニック

2026.05.14更新

宗像市、葉山クリニックの撫中です。最近、しばしば遭遇することが、「時間の記憶が事実と違う」ということです。どういうことかというと、会話中、「最近、一緒にどこどこに買い物に行った。」と友人がコメントしたとします。しかし、言われた当人には記憶がない。しかも最近、というほどの過去に、そういう事実がない、といったことはよく経験すると思います。そこから記憶をすり合わせて事実確認をします。ここで、問題なのが、最近、ちょっと前、2か月前など、時間経過を表す表現が個別にはかなり差異があるということ、人は忘れやすい(エビングハウスの忘却曲線)ということ、人間には時間を感じる器官がなく、同じ時間を長く感じたり、短く感じたりして、時間の感覚が不正確であること、などから「時間の記憶が事実と違う」ということになります。診療は電子カルテを使用していますので、患者の受診した日付は正確に記録されます。その電子カルテの前ですら、大きく事実と違う記憶が披露されることはまれではありません。自分もふくめて大体過去のあまり重要でない記憶の時間感覚は半分に短縮されて表現されます。つまり1か月前に起こったと表現されるときは、事実は2か月前の出来事、1年まえは2-3年前、というように短縮されます。脳からの記憶の信号が少ないほど、時間が短縮されます。年齢と共に代謝が低下し、信号を発する機会が少なくなると、時間の経過が早く感じるのはこのためだと考えられています。大事な友人とつまらないことで口論にならないためにも、時間感覚は正確ではないということを自覚しないといけないと思う毎日です。

投稿者: 葉山クリニック

2026.05.02更新

宗像市葉山クリニックの撫中です。誕生日を迎え、67歳となりました。年だけとって、成長は感じられません。逆に、体力、体調は確実に老齢期に達していることを実感します。かといって加齢を憂いているわけではありません。それなりに年相応の高揚感というものもあります。そしてまだ、誕生日をお祝いしてくれる人がいることも幸せだと感じます。夜、「お誕生日おめでとう」と母から電話がありました。90歳の母からのコール。苦労を掛けた記憶が鮮明によみがえり、67歳でも母親の前では子供であることを実感します。

投稿者: 葉山クリニック

2026.03.30更新

葉山クリニックの撫中です。人生を生きる中では、様々な意思決定(決断)をしているはずです。ケンブリッジ大学の研究によれば、言語、食事、交通などの一般的な選択から、身体の動きや日常生活の様々な行動に至るまで含まれ、1日に最大で3万5,000回もの決断を下しているといいます。脳科学的には、1)問題認識 2)選択肢の生成 3)予測と評価 4)選択 が常に実行されています。特に予測と評価においては、前帯状皮質と前頭葉が関与し、ドーパミン(報酬、快楽に関与)という神経伝達物質が関与します。ドーパミンは報酬予測エラーと呼ばれる信号を生成し、予測した報酬と実際の報酬の差を学習することで意思決定を調節しているようです。つまり、その決断が自分にとって損なのか得なのかを評価しているというのだそうです。しかし、その瞬間には決定回避の心理という逆方向の心理も働きます。決断することで、• 他の選択肢を失う• 責任が生じる• リスクを背負うといったマイナス面が脳裏に浮かび、決断を鈍らせます。より完璧を求めて動けない、比較しすぎて迷う、情報を集めすぎて決められなくなります。結局、最後は「思い切り」なのです。ある程度思考した後は、やる気が出るのを待つのではなく、少し動いてみることが大切で、やる気は後からついてくるものです。

投稿者: 葉山クリニック

2026.02.26更新

宗像市葉山クリニックの撫中です。ともに80歳代のご夫婦が受診されました。妻が数年前に脳卒中で生死を彷徨い、手術、リハビリの結果、数か月前に自宅に帰ってくることができました。その期間、夫がコロナ感染でお見舞いもままならない中、受診の度に妻の安否を気にかける姿を見てきました。「明日、帰ってくる。」と言ったときの、夫の笑顔を忘れることができません。妻は幸い、大きな後遺症もありませんでした。しかし、長期間の病気療養で全く元通りというわけにはいかず、先日、脱水で救急搬送されたことを報告してくれました。傍らで、夫が「無理して歩いて行ったんです。タクシーで行こうといったんですが、、。」と自身を責めるように反省していました。妻は、逆に夫に心配かけないように元気な姿を見せようとしたのですが、思ったほどの体力がなかった、ということでしょう。しかし、迷惑かけないようにしよう、という気持ちからか、夫のいうことを素直に聞かないようでした。私は夫に加勢して行動を自重するように促しました。一連のやり取りが終わり、ご夫婦が診察室を出た後、お互いを思う愛情の深さに、不覚にも涙しました。同時に、この瞬間、この光景に、幸せを感じました。

投稿者: 葉山クリニック

2026.02.14更新

宗像市葉山クリニックの撫中です。現代において、ヒトは生きにくくなりました。単純に、「食べて寝る」を実現するために、食べ物と探し、採取あるいは自分でつくり育てる、そして摂取することから、間接的に何かの対価を払って取得する(お金など)に変遷し、一次産業の人口は少なくなって、二次、三次産業での働きが多くなりました。どの産業にも知識が必要で、肉体労働と言えど、そこにはコツという理論があります。どの分野にも知的機能(記憶、推論、判断、言語理解、問題解決など)が必要ですが、時に精神の混乱がこれらを妨害することがあります。かなり高度な知的機能の持ち主でもそれは抑制することは容易ではありません。ゲーム理論のナッシュ均衡で知られたノーベル経済学者のジョンナッシュ先生も長年、この精神異常に悩まされました。入院も余儀なくされた中で、彼は研究を成し遂げました。知性と精神が明確に違うものであることを体現して見せました。私など凡人は精神的な状態が知的機能に大いに影響を与え、判断が鈍り、間違うことが多くなります。だから、重い判断をするときは精神の安定があるときに実施した方が間違いを最低限におさえられると考えます。ただ、この精神の安定が実は最も難しい条件となることは自明の事実です。まだまだ、経験、訓練が必要です。

投稿者: 葉山クリニック

2026.01.10更新

宗像市葉山クリニックの撫中です。ヒトは、見たものの「好き嫌い」を瞬時(0.5秒から数秒)に判断をします。その後、対象に対する種々の情報からその「好き嫌い」を持続・発展が可能か、それ以上の関係を持続させないか、ゆっくり判断することになります。対象は、人間、物質、事象になります。対象を人間に特化すると、いわゆる「一目ぼれ」がこれに該当します。一目惚れとは、初めて会った瞬間に相手に強い恋愛感情を抱く現象です。これは理性よりも本能が先に反応し、わずか数秒から数分という短い時間で心を奪われる特別な感情です。情動の中枢である扁桃体にはすべての感覚情報が収束し、その反応は理性(大脳皮質)の反応よりはるかに速い速度で判断します。と同時に、いろいろな脳の部分に神経伝達物質を介して出力し、動悸、赤面などの肉体的変化も現れます。おそらく種の保存のために、情動(本能)は存在し、その反応は、脳内報酬物質(ドーパミン)の分泌として、依存的になります。その後の客観的な情報が入ってきてもこの依存性は強く、ネガティブな情報を正当に評価できない状況になります。いわゆる「恋は盲目」というわけです。恋愛における成功はなかなか確率の低いことがわかります。ちなみに一夫一婦制の哺乳類は3~5%だそうです。もちろん人間はこの中には入らない種だと考えますが、いかがでしょうか。

投稿者: 葉山クリニック

2025.12.22更新

宗像市葉山クリニックの撫中です。クリスマスはイエス・キリストの降誕祭であること、その由来は諸説ありますが、2世紀~4世紀頃のローマ帝国領内で、土着信仰の祭祀をキリスト教の降誕祭に吸収し定着させたものではないか、ということです。イエスが誕生した月日は不明ですが、4世紀初頭の教会では12月25日と定めていました。これは春分の日でもある3月25日の受胎告知からちょうど9ヶ月後です。世界各国でおおよそ採用されている、グレゴリオ暦の12月25日に祝います。クリスマスカラーの「赤」はキリストに関わる色であり、「太陽の炎」や「寛大な愛」を象徴し、「緑」は「生命力」や「永遠の命」を、「白」は「純潔」や「潔白」を意味します。毎年、クリスマスにケーキを食べる、少し豪華な食事をする、大切な人と過ごす、など宗教的な意味は知らずとも、なんとなく愛を感じる日です。その日だけでも慈悲深い日になる、そんな特別な日になっていること自体、偉大な日ではないでしょうか。

投稿者: 葉山クリニック

2025.12.11更新

宗像市葉山クリニックの撫中です。かつて京都に「伝説」の予備校があった。京大・国公立医学部に毎年300人以上の合格者を出し 京都大学医学部・京都府立医科大学の合格者の3割以上を占めていた時期もあり、京大受験・難関校に強い予備校として知られていた。昭和40年代から60年頃までが、合格実績のピークであった。当時は、理科3クラス、医科1クラス、文科1クラスで合計1300名の定員であった。しかし、三大予備校が全国展開するようになり、京都ローカルの予備校として劣勢となり、少しずつ合格実績は悪化していった。(Wikipediaより抜粋)

1982年 (昭和57年度) 在籍定員1300名中 合格実績 (在籍者のみ、講習のみ受講は含めず)
京大合格者 265名(医 36名、薬8名、理24名、農30名、工112名、法23名、経18名、文11名、教3名)
医学部合格者 347名

小生も1979-1980年の1年間在籍していた。合格実績は上記と同様と記憶している。先日、同予備校の同窓会があった。同じアパートで、同予備校に在籍した仲間たちである。まず、予備校卒業してから、31年目に第1回を実施、立て続けに3回までは開催したが、コロナのパンデミックで今回8年ぶりの開催となった。13人がアパートに在籍、今回は9人出席、3人は都合がつかず、欠席であった、。あと一人の方の消息が依然不明である。たった1年間のつながりで、しかも浪人生であり、そこまで会話もしていなかったのに、未だに集まってその当時の記憶をたどる会がひらけることは非日常であり、とても幸福感に満ちた時間である。仲間たちも異口同音に「この会が一番楽しい。同窓会の中でも最優先だ。」という。全員が今あるのはこの浪人時代が決めたと思っている。結果が出てよかった、と今でも痛感する。表題の「伝説」というのは、帰路の新幹線のなかで検索してはじめて知ったことであるが、渦中にいたときは意識したことはなかった。今思えば、狂気に満ちた成績だ。思い出話は尽きず、5年後に次回開催を約束し、解散した。と同時にグループラインでまだ過去のいろいろな出来事の答え合わせが進行している。何とも愛おしい会である。

投稿者: 葉山クリニック

2025.11.21更新

宗像市葉山クリニックの撫中です。90歳の老婆が数年ぶりにきた墓前で、お経を唱え、終わると亡くなった夫に語り掛けていました。近況報告から、はじまり、最後は「また、来るわ、お父さん。」と声をかけ、墓前を後にしました。遠方に住まいがあり、また、高齢であるため、お墓にくる機会は限られます。この先、再来できるかどうかもわかりません。これが最後という思いで来ているにも関わらず、また来る、と夫の墓前に告げています。彼女には何か返信が聞こえているのでしょうか?傍観しているものからは理解できませんが、十分な満足、数年の空白を埋めるに足りる声かけだったようです。最後にお墓に直接、手を置き、数回、撫でます。目には涙がたまっていました。亡くなったものとは会話することは叶いませんが、思い出の中で生前の声、笑顔と逢っていたのでしょう。愛情に満ちた光景でした。これが先日の母の様子です。

投稿者: 葉山クリニック

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