2025.07.01更新

宗像市葉山クリニックの撫中です。最近、帯状疱疹の予防接種を実施する機会が多くあります。予防接種の効力の年数について説明するとき、患者と間で、「そんなに生きなくていい」というコメントが頻回に発せられます。高齢者ほどその発言は多く見られます。そこで、一般に人間の寿命は何歳かを調べてみました。東大の小林武彦先生によると、生物学的な寿命は55歳くらいだとのことです。根拠は、いろいろありますが、ほぼDNAが一致するチンパンジーなどが55歳であること、ゲノムが壊れるとがんが発生するのですが、55歳までは修復ができます。それ以降は壊れることが多くなること、などが挙げられます。しかし、日本人の平均寿命は男女ともに80歳-90歳くらいと上記の遺伝的寿命をはるかに超過しています。55歳以降の人生は、公衆衛生や栄養状態の劇的改善、医学の発展という「文明がもたらした生」と言えます。つまり、他の動物にない「老い」というものが人間にはあります(ペットの犬なども腫瘍でなくなることはあります。おそらく理由は人間と同様に寿命以上に生きているからではないでしょうか)。「いつ死ぬか」の問の答えは正確にはありませんが、55歳から90歳くらいの間、寿命超過した期間になると思います。「そんなに生きなくていい」に帰りますが、「老い」たことが無意味なことなのか?そんなに生きなくていい、というのは、高齢者が持つ心理の特性に起因するようです。他人に支えられ(感謝)、自分中心から他人を大切にする(利他性)、肯定的な自己評価(肯定感)をする。そのことで、死に対する恐怖すらも消失するようです。生殖機能を失ったものが社会に貢献できないことは全くなく、十分に育児に携わることができます。決して「老害」などではなく、「老益」なのだと思います。ひとの社会にだけもたらされた寿命超過、意味はあるのではないでしょうか。

 

投稿者: 葉山クリニック

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